ひずみの話

実用化に問題はつきもの?

1978年、この頃エレベータもインバータ式に変わり、無段階の速度制御により乗り心地が大きく変わってきました。

反面、電気にひずみが発生して機械が壊れたり、停電したりすることが出てきました。

新しい技術が実用化する時には大概問題も発生するようです。


北海道で起きたブラックアウトでは瞬時に周波数や波形ひずみが発生して大停電しましたが、それがゆっくり進む現象です。


その当時も、電力会社の数学プロ系統運用(送電、配電網を計画運用している部署)より電圧ひずみの検出装置の開発依頼にあたりました。

その構成は、図のように基本波50Hzよりアナログフィルタで奇数高調波を取り出し、ひずみ率を計測表示する機器です。

   ひずみ率=高調波実行値÷基本波実行値 x100[%]

電圧ひずみ率表示器の原理

高校時代の知識で解決

基本波(50Hz)を1/1000以下に除去した高調波を基本波で割ると電圧ひずみ率が計算されますが、アナログ計算方式をとりました。



以前の記事のように測定する交流電圧をトランスで絶縁と電圧を下げ、その信号電圧をアナログフィルターに掛けます。

基本波はローパスフィルター、高調波はハイパスフィルターで取り出せます。

これは、工業高校時代に覚えた計算尺原理、対数の引き算で解決しました。

小さい会社なので検出原理からトランス、リニアIC、リレーなどの部品選定、回路図、基板のレイアウト図、試作、評価まで全部の工程を行いました。



原理は同じ


トランスは電圧波形を正確に取り込み、外部との絶縁も必要なセンサーです。

材料に高周波特性の良いパーマロイ系金属を使いカットコア形状とし、更に1次2次コイルの間に絶縁フィルムを挿入、更に中間層に金属シートを入れ接する構造をとりました。

また2次コイル側にある程度の負荷抵抗を入れて電流ひずみを少なくしました。
スタティックシールドはフォトカプラICでも多く使われていますが、当時も今も原理は全く同じです。

異なっていることは、小型化させる為の素材と工法のみです。

旧AVAGO製フォトカプラICの論理図より
スタティックシールドがGND端子に接続されている構造

この他、当時国内ではノイズ規格がまだ無い時代でしたが、米国の電力系ノイズ規格をクリアさせる為、ポリイミドシートに銅箔をつけたフレキシブル基板で二重シールド構造により外来ノイズをコモンモードノイズに変換して、耐力を上げました。



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