センサスイッチを開発するには
前回はMRセンサーの調整方法について説明しましたが、今回からはセンサスイッチを開発する時に必要な基本特性の取り方を記載します。
MRセンサー(気抵抗センサー)は、磁界の強さによって抵抗値が変化する素子をブリッジ構成として出力を取り出します。
まず、MRセンサーを評価するには基準となる磁界発生器が必要となります。
図1.
■ヘルムホイツコイル(図1)は左右両端に空芯コイルを配置し、中心位置では均等な磁界を発生することが出来ます。
コイルとコイルの間に空間が出来るので、作業にとても便利な装置です。
図2
ヘルムホルツコイルの設計方法は電磁気系の専門誌に掲載されていますが、コイル電流を大きくするとコイルの銅損により発熱しますので注意が必要です。
■ヘルムホルツコイルの校正
校正にはガウスメータと基準電流を使い図2のように行います。
コイルの中心位置がもっとも安定している(平等磁界)ので、その位置にガウスメータのプローブが設置出来る様に冶具を作ります。
ガウスメータのプローブが円柱型のアキシャル型を使います。
厳密には、センサー感磁面の位置がプローブ先端から数mmずれていますので、位置の補正を行います。
メーカーに問い合わせれば教えてくれます。
図3.東洋テクニカHPより引用
シリンダーの表面磁界(厳密には磁束密度)は、20mT(200G)程度まで変化します。
ヘルムホルツコイルに加える電流を調整することで必要な磁界を得ることが出来ます。
このシステムでは10Aで20mTが得られます。
これで、基準となる磁界発生器のトレーザビリティーが出来ました。
■MRセンサーの静特性
MRセンサーは2~3mm角なのでプリント基板に接着してから、ヘルムホイツコイルの中心位置にセンサー基板を設置するための冶具で固定します。
設置用の冶具はPOM等の非磁性体を用います。
フルブリッジMRセンサーの電源電圧は±2.5Vを使います。
センサー出力は0Vを基準にブリッジ出力電圧を測定します。
有効数字3桁まで測定するため、基準電圧の発生と電圧測定が高精度に出来るハンディーキャリブレータを使います。
自作も可能ですが、基準電圧とアンプゲインの精度を保障する必要があります。
GPIB経由でデータを取り込んだ結果が次のグラフとなります。
縦軸はOUT1とOUT2はそれぞれV基準からのハーフブリッジ出力電圧です。
横軸は磁束密度です。
OUT1とOUT2が上下反転するように素子を配置しています。
ヘルムホイツコイルの電流を±10A変化させることにより、±20mTの磁束密度を与えています。
注)本来はBには±を記載しませんが、ここでは分かりやすくする目的で記載します。
OU1に着目すると、B=0mTを0点として磁性体の初期化特性を描いています。
20~30mTで飽和領域へ移行していることが分かります。
また、磁界上昇と下降時にはヒステリシスを持つことが分かります。
このように中点電位差、抵抗変化率、ヒステリシス点に着目して、MRセンサーの最適値を統計的に見つける必要があります。