美しさには訳がある・・・アクリルの鏡面仕上げ
アクリルを磨いて透明にする方法をお話ししたいと思います。
最近は加工機の精度や加工工具の進化により、形状によっては加工だけで鏡面加工が出来るようになっています。
今回はあえて人の手による方法の一つを紹介します。
アクリルはエンドミル等で切削加工をすると、表面は白く濁った摺りガラスのような表面になります。
これは表面の面粗さが荒いため白く見えるのです。
鏡面仕上げというのは、この面粗さを限りなく平滑にすることによって実現します。
それでは手順を紹介していきましょう。
加工した段階では、表面にツール目という切削加工をした時に出来る刃物の跡があります。
これを耐水ペーパーで磨きます(耐水ペーパーとは水に濡らしても破れない紙やすり)。
先ずは400番程度の粗さのペーパーでツール目をきれいに磨いて消していきます。
この時に注意しなければいけないのは、粗い番手ほど研削力が強いので形を崩さない、同じ箇所ばかり磨いて面を歪ませない事です。
水を使って磨くのは、研磨した時に発生するアクリルの粉のスムーズな排出とアクリルの焼けを防ぐためです。
ここから600番、800番、1000番と段々細かく最終2000番まで磨いていきます。
前の番手の磨き傷をしっかり消します。
ノウハウとして、青ニス(水性のニス)などを塗って着色し全体の研き残しが無いか確認します。
こらは非常に根気の要る作業でして、何かの修行?(笑)に思えてきます。
1000番を超えると、磨けてるのかどうか根気も尽きてきて一気にバフなどで仕上げてしまいたい気持ちになってきます。
しかーし・・・ここで手抜きをすると命取り。
光ることは光りますが、傷だらけの透明物の仕上がりです。
アクリルの鏡面仕上げは自分との戦い・・・しっかり手抜きをせず順序通りに磨いていけばゴールに辿り着きます。
経験から言うと、無の境地になって(やっぱり修行?)コツコツ磨いていく事が大切です。
マラソンや山登りと同じ様なところがありますが、アクリルの研磨は作業が何とも地味なんです(笑)
話が何だか精神面の方にずれて来ましたので、本題に戻します。
2000番まできっちり磨いた物を最終仕上げをしていきます。
この段階でも見た目は摺りガラス状です。
ここから、3000番以上のコンパウンドやバフを使用して鏡面仕上げをしていきます。
柔らかい布にコンパウンドを付け丁寧に磨いていきます。
バフを使用する場合は、アクリルの表面が焼けないように、また角になっているような箇所はだれないよう細心の注意を払って磨いていきます。
しっかり磨き終えて、コンパウンドや指紋を拭き取ればいよいよ完成です。
きれいな透明の製品が完成してることでしょう。
以上が手作業による鏡面仕上げの手順です。
金型を鏡面仕上げにして成形し透明な成形品を沢山作る事は出来ますが、 数個レベルで必用な製品や試作品等は、こういった手仕上げで作られています。
以上、アクリルの鏡面仕上げのお話でした。