リレーと半導体
今回は、30年の電力制御機器メーカ勤務時代を振り返って、「リレーと半導体」の話をしたいと思います。
私が社会人になったのは1976年4月、東京電力、日立、東芝等重電メーカ向け機器の開発、製造、設置、販売、特に変電所内の計器、継電器、制御盤をつくる小さな会社でした。
信号制御の世界ではまだまだテレホンリレー、ワイヤスプリングリレーが主流で、そのリレーの製造とリレーで論理回路を構成した制御機器を作っていました。
コイルに電流を流すと電磁吸引力が発生しアーマチュア(可動子)が動きa接点がON、b接点がOFFする構造です。
特にリレーで信号回路を構成させるため多数の接点を持っているのが特徴です。
このリレーで論理積and、論理和or、排他的論理和Xor、否定notを構成し演算(ブール代数)を行います。
現在ではロジックIC回路を1チップで構成できますが、当時はコインロッカーぐらいの大きさが当たり前でした。
リレーは構造上温度変化経年変化に対して信頼度が高く、最近までエレベータの制御回路に多く使われていました。
今でも上野の科学博物館で、歴史的工業遺産としてリレー式計算機が展示されています。
当時はリレー~トランジスタ~半導体ICへと、電子部品の発達が驚異的に進んだ時代です。
この頃初めてICと出会いました。
当時は生産技術として設計から来た製品を量産に流す仕事を始めた頃です。
変電所内の制御電源はDC110Vの無停電電源を使用しています。
その電源監視用に直流地絡不足電圧継電器(電圧低下と片側接地を検出する継電器)をICで製品化し発売する時期にあたりました。
回路図の一部を表しますが、110V電源を抵抗分割し基準電圧と比較して出力RYを駆動させます。
当初OPアンプの入力側+、-に夫々マイラーコンデンサを付けて1次フィルタを構成させていましたがノイズ試験などの信頼性試験でNGとなり、結局+-端子間に小容量のフィルムコンデンサでOKとなった記憶があります。
最初の回路は原理的に良さそうですが、+-より入力側を見た時のインピーダンスの差異が発生しノーマルモードノイズに変換されOPアンプに入力されたようです。
今では見慣れた回路構成ですが、ここまで辿り着くのに苦労した記憶が残っています。
回路はシンプルが一番ですね。
電圧低下をOPアンプの比較回路で検出するのですが、最終的にはRY出力させる必要があります。
制御電源110Vを駆動電源として使う為、出力RYは常時励磁でB接点を使う必要があります。
電圧範囲110+20%
出力RYは小型のミニュチュアRYを使いますから、
コイル損出はP=V2・R より
電圧の二乗で効いてきますのでそのままでは焼けてしまいます。
そこで考えたのが、こんな回路です。
RYのアーマチュアが動き接点が切り替わったら、RYコイルと直列に抵抗をいれてコイル損出を下げる方法です。
ICもいらず簡単に出来るシーケンスです。
いまではPWM等のデジタル技術で定電流回路が簡単に使えますが、当時はこの様なシンプルな回路方式をとっていました。