造形の話

3Dプリンター

3Dプリンターを知らない方はいないと思います。

3Dプリンターを使えば物が作れる。


TVなどでも「3Dプリンターで車を作りました」と記事になっておりますが、この言葉だけ聞くと車一台分のパーツ全てを、3Dプリンターで作ったのだと言わんばかりです。

燃焼機関を使わない電気自動車であっても、動力関係を3Dプリンターで作るのは不可能です。

細部まで再現したモックモデルであれば、エンジン内部部品のワッシャー1枚まで作る事は可能です。





ものづくりの知識の少ない人や子供達がこのニュースを観たり聞いたりしたら、「3Dプリンターがあれば何でも作り出せる」と思ってしまいます。

正しくは、「車のボディやエアロパーツ、内装品を3Dプリンターで作りました」と記事にして頂きたいです。


何年か前に、3Dプリンターで造形し作ったプラスチック拳銃をYouTubeで紹介し逮捕者が出ました。

私も動画を観ましたが、造形した拳銃と言ってもお粗末な玩具レベルで「アレで実弾が発射できるか?」と思いましたが、警察の発表では殺傷能力があるとの判断でした。

また投稿者が動画で述べたコメントに私は違和感を覚えました。

内臓モデルを作る

15年程前に、人体の内臓モデルを作りたいと依頼がありました。

造形で製作した心臓モデルなどはよく耳にしますが、依頼を受けたのは肝臓の造形モデルでした。

肝臓内部は人それぞれ血管の位置が違う様で、外科手術では医師の感覚でメスを入れると聞きました。

肝臓のCTデータを元に3Dプリンターを用いて透明肝臓モデルを作り、手術前に血管の位置など把握し医師の負担を減らし、そのモデルを肝臓と同じ硬度のシリコン材質に置き換え肝臓内の血管に掛かる血液の圧力を検証するプロジェクトでしたが、残念ながら予算の関係で中止となりました。

時の肝臓CTデータを使った肝臓の血管を造形したテストモデルです。


現在なら「補助金」に公募する方法もあったかと思います。


またスキャンデータを使い、何らかの事故や病気で欠損した骨を造形機で人口骨を作り移植し体に合った義手や義足を作り出す事が可能ですし、頭部をスキャンし体にフィットした眼鏡やヘッドホーンを作る事も可能です。

3Dプリンターや造形機は、人を傷つける物を作るのではなく人の役に立てる物を作る機械ではないでしょうか?

一言で3Dプリンターと言っても、数多くの機種があり机の上で使える小スペースモデルからABS・PP樹脂を溶かしノズルから盛り付けるプロッタータイプや、1000×800×500(mm)の大きさの物であれば光硬化樹脂を紫外線レーザーで照射することにより固め複数を一度に作り出す事が可能な光造形機など、使う用途に合わせ幅広くラインナップされております。



特に光造形は寸法精度に優れており、機械の調整次第では寸法精度±50ミクロンが可能かと思われます。



精度の良い光造形機は機械上部にガルバノレンズが設置され、標準径0.2φのレーザーを中央から照射し樹脂を固め積層しますが、造形モデルの端の方は構造上レーザーが斜めに入るため照射形が楕円になり補正が不可欠となりZ方向の可動テーブルの調整など合せて年3~4回実施し、1回のメンテナンスには3~5日時間が掛かり費用も高価になります。


あえて調整次第と書いたのは、正確なモデルを作るには定期的なメンテナンスが絶対必要だという事です。



自分でデザインした3Dモデルを造形するには、3DCADデータをSTLデータに変換出来るソフトとスライスデータ(断面)を作れる環境が無ければ残念ながら造形することが出来ません。

3Dプリンターだけ購入所有してもモデル品は作れないという事です。

Web上に落ちている造形データを使うか、データ業者様に依頼しデータを作るしか方法はありません。

造形データは、積層方向の輪郭と輪郭内を塗り潰す軌跡のデータが必要となります。


例えば、1回の積層が1mmとした高さ200mmのモデルを作るには断面データが200個必要となりますが、この積層数ですと造形モデルは粗く凸凹がはっきり見えてしまいXYの寸法も±1mm変化してしまう事になり正確に形状を再現するために細かく回数を増やして積層します。




光造形機は、Z方向1回の最小積層は0.05mmが可能機種もあり200mmのモデルを0.05mmで積層した場合4000個の断面データが必要となり、製作時間もデータ容量も20倍になりますが、その分表面は綺麗になります。


STLデータは三角パッチ面で作られており変換時の許容値でデータ容量は大きく変わり、許容値を大きくすると面が粗くなりデータ容量は少なくなるが球体などは平面の集まりになってしまい造形したモデルも同じ形状になってしまいます。


参考に3DデータからSTLデータの許容値を替え2種類出力してみました。


細かいSTLファイル・容量4.830kb
粗いSTLファイル・容量18kb

3Dデータは直径100mmの球体モデルですが、出力許容値でデータ容量が大きく変わるのが解ります。


粗く出力されたSTLデータを読み込むビュワーソフトによっては、面を丸く修正し表示される補正が掛かっている場合もありますので注意する必要があります。
画面ではツルツルだったのに、出来上がった造形モデルはガビガビに成ってしまった?とそういった事例もあります。

非接触スキャナーを活用して実物をスキャンする事により、車の外装や内装のオジナル製品を作る事も3Dプリンターがあれば可能です。

展示会向け模型ホビーをスキャンし、拡大小モデルを作り展示した事もあります。

マターモデルをスキャンし光造形したモデル
造形終了時のモデル

勿論、貴方をスキャンし等身大のモデルを作る事も可能です。



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